はじめに
皆さん、こんにちは!
東大卒、大手化学メーカー勤務の社会人2年目マーケティング担当のらいくです。
今回は、議論をする相手と目線を合わせるために非常に重要となる話の「具体性」や「抽象度」に関して、びっくりするくらい上手くまとめられた細谷功氏の著作『具体と抽象』について要約&解説していきます!
会議などで実のある議論をしたい人、周りと話が合わなくて悩んでいる人などは、必見の内容です!
その前に、どんなやつが書いている記事なのか知りたい方もいらっしゃると思うので、私の簡単なプロフィールをご紹介します。詳細はコチラをご覧ください。
- 東京大学文科三類現役合格、文学部社会心理学専修卒業
- 大学時代、体育会運動部主将
- 某大手化学メーカー、社会人2年目、マーケティング担当
- TOEIC 910、ウェブ解析士、Advanced Marketer
私は、周りの人と話をしていて「噛み合わないなあ」とか、「そういう答えを求めているんじゃないんだよなあ」と思うことが時折あります。
読者の皆様の中にも、同様の経験をしたことがある人がいるのではないでしょうか?
著者の細谷功氏はこの原因として、話の「具体性」、もしくは「抽象度」のレイヤーが噛み合っていないことを挙げています。
この記事と『具体と抽象』を読めば、話が通じない理由を言語化し、それに対してどのようなコミュニケーションをとっていくべきなのか、戦略を立てられるようになるでしょう。
それではさっそく見ていきましょう!
この本のテーマ
細谷功氏の『具体と抽象』は、論理的思考力を高めるための重要な要素を解き明かす一冊です。
その核心にあるのは、「具体と抽象」という二つの思考パターンの間を行き来することで、深い理解と洗練された思考を育てることが可能であるという主張です。
物事を理解するためには、抽象的な思考が欠かせません。抽象的な思考とは、具体的な事象から一般的な原則を引き出す能力のことです。これは、さまざまな具体的な事例を一つのカテゴリーや概念にまとめ、それらを理論的な枠組みで理解することを可能にします。
しかし、この抽象的な思考が、他者とのコミュニケーションにおいて問題を引き起こすこともあります。
人間の思考や言語は、その深さや広がりを持つ抽象的な概念に対応していますが、それぞれの人が理解する抽象度は異なります。したがって、相手が自分の話す抽象度に合わせることができるかどうかは、話がかみ合うかどうか、また、相手に知性があると感じるかどうかに直結します。
この本は、そんな生きるうえで欠かせない「具体と抽象」というテーマを「具体」例を上手に活用して、伝えてくれる非常に有効な本になっています。
抽象化なくして生きられない
人間の知的活動は、基本的に「抽象化」によって推進されてきました。「抽象化」とは、具体的なものや現象から一般的な原理や法則を引き出す能力のことを指します。これは、我々が抽象的な思考を用いて、日々目の前に広がる膨大な情報を適切に整理し、理解するために欠かせない機能です。
その「抽象化」の代表的な例としては、言語と数が挙げられます。
例えば、「ブルドック」や「ダックスフンド」という一見見た目が全く異なる動物を見ても、我々はそれを「犬」として認識することが出来ます。また、「犬」という概念を共有していることで、人から聞いた話を場面として思い浮かべることが出来ます。
また、数もまた我々が抽象化を行う手段の一つです。
例えば、犬の2匹と猫の2匹を目の前に見たとき、サイズや形などが全く異なる見た目でも私たちは、2という共通性を見出すことが出来ますし、足し合わせて4匹だと認識することが出来ます。
このように、数字を用いることで、異なる物事の数量や大きさを示すことが可能になります。
このように、抽象化は私たちの日常生活の中で常に行われています。言語や数を例に出しましたが、これらの抽象的な概念のおかげで私たちは「思考」することが出来ているのです。
そして、その思考の過程で得られた抽象的な理論や法則をさらに別の物へと活用することで、私たちはさまざまな問題を解決し、新たな発見を行うことができます。それが人間が「知性」を持つ生き物として、この世界で生きていく上での重要な武器となっています。
『具体』と『抽象』を往復する
論理的な思考力を向上させるためには、『具体』から『抽象』へ、そして『抽象』から再び『具体』へと、思考を往復させることが不可欠です。
具体的な事象から抽象的な法則を導き出し、それを別の具体的な事象に適用する。このプロセスを何度も繰り返すことで、私たちはより広範かつ深い理解を得ることができ、多角的な視点で物事を考える能力も養われます。
具体的な例を挙げて考えてみましょう。例えば、ある企業の業績が好調であるとします。その要因を探るためにはまず具体的な状況を把握し、それから抽象的な法則や理論を導き出すことが必要です。
たとえば「製品の品質が優れている」「マーケティング戦略が効果的である」「経営層のリーダーシップが素晴らしい」といった具体的な要素から、『優れた製品開発』、『効果的なマーケティング』、『強力なリーダーシップ』という抽象的な原則を導き出すことができます。
そして、この抽象的な原則を別の具体的な事象、たとえば別の企業の業績改善に適用することで、新たな問題解決の道筋を見つけることが可能となります。このような具体と抽象の往復が、知識の深化と創造的な解決策の発見につながります。
このように、『具体』と『抽象』を往復する思考は、一見複雑に見える問題でも、よりシンプルで理解しやすい形に落とし込むことができる重要な能力です。そして、これが「知性」を高め、物事の本質を理解し、新たな視点を見つけるための鍵となります。
抽象度の階層は「マジックミラー」
コミュニケーションにおける課題の一つに、「抽象度の階層」があります。これは、話す内容の抽象度のレベルが同じでないと、意思疎通がうまくいかないという概念です。
この状況を細谷氏は「マジックミラー」で例えることでわかりやすく説明しています。
皆さんもご存じだと思いますが、「マジックミラー」とは、ある方向からは向こう側が見えるが、逆方向からは鏡のように見えるというものです。
すなわち、「具体と抽象」の話に置き換えると、抽象的な概念を理解できる人は、その鏡を通じて具体的な世界も見ることができます。一方、具体的な世界しか見ることができない人は、抽象的な概念の世界を見ることはできません。
つまり、抽象的な概念を理解できる人が、具体的な話を理解できない人に対して、その人が理解できる具体的な言葉を用いて説明を行う必要があります。抽象的な思考ができる人が具体的なレベルまで落とし込むことで、コミュニケーションの質がより良くなります。
この「マジックミラー」の概念は、教育やリーダーシップ、さらには日常生活におけるコミュニケーションにおいても非常に重要です。
自分が理解している抽象的な概念を、具体的なレベルで他者に伝える能力は、真の知性とも言えるでしょう。それは、自分だけでなく他者との認識を共有し、理解を深め、物事を前進させるための必要なスキルです。
抽象化だけでは生きにくい
「抽象化」の能力は、高度な思考を可能にする一方で、実生活においては必ずしも有利とは限らないことを理解することが重要です。
なぜなら、人間は決して一人では生きられないからです。
私たちが抽象的な概念を理解し、それを具体的なアクションに落とし込む能力は、それが「マジックミラー」のように一方通行であることを考慮すると、さらに重要性を増します。
具体的な世界しか理解できない人々は抽象的な概念を理解できないため、彼らを正しく動かすためには、具体に上手く落とし込む必要があるのです。
この現象は、ビジネスの世界で特に顕著で、成功するためには抽象的な戦略を具体的な行動に変換する能力が求められます。抽象的なアイデアを生み出すことができるだけでなく、それを具体的な形にすることで、初めてそのアイデアは価値を持つことができます。
したがって、真の知性を持つ人間とは、抽象的な概念を理解し、それを具体的なアクションに変換する能力を持つ人物を指します。これが、抽象化を非常に重要な能力だとしている筆者が「抽象化だけでは生きにくい」という主張を同時にしていることの根底にあります。
まとめ
本記事では、人間の知性を巡る重要なテーマである「具体」と「抽象」の二つの思考について、細谷功氏の『具体と抽象』を通じて学んできました。
私たちの知性を支える重要な要素である「抽象化」は、私たちが世界を理解し、知的生産を進める上で必要不可欠な思考プロセスであり、人間を他の生物と区別する特徴の一つです。
しかし、「マジックミラー」の比喩のように、具体的な世界しか理解できない人が抽象的な概念を理解することは難しいため、「抽象化」を理解できる高度な知性を持つ人々が、具体的な世界を理解できない人々とコミュニケーションをとるためには、自身が歩み寄る必要があります。
「具体」と「抽象」の思考レベルを理解し、適切に往復できるようになって、より洗練された思考と行動を可能にし、自身の知性を高めていきましょう!
最後に
長文になりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
この他にも、おすすめの本の紹介や資格取得レビュー(ウェブ解析士はコチラ)、TOEICの各パート別の対策(パート1、パート2)やセクションの対策(リスニング、リーディング)などの記事も挙げているので、そちらもぜひお読みください!
Twitter(@ut_how_to_study)のフォロー、記事の拡散やリアクションを頂けると幸いです。
コメント